鳥取県大山町にある”合同会社sunsunto”。
代表の佐々木正志(通称:まーしー)さんは、2015年度に地域おこし協力隊として、鳥取へ移住。以後、1年で協力隊を卒業し、2年間の個人事業主を経て、現在の合同会社を設立されました。
今回は、まーしーこと佐々木さん(以下:まーしー)が鳥取に移住され、起業されるまでの経緯と今を伺いました。
プロフィール
東京都世田谷区出身のまーしーさんは、早稲田大学卒業後、約2年間広告代理店に勤務。その時に偶然目にした”大山町観光プロデューサー職”の求人募集に、魅力を感じ、記事を見つけたその週に大山町へ。訪れた際に、大山の紅葉と雪が同時に見られる景色と、地域の方々の温かさに一目惚れし、移住を決意しました。
2015年度大山町地域おこし協力隊として活動を開始するも、”大山だからこそできること”だけでなく、”自分だからできること”もカタチにしていこうと、1年で協力隊を卒業。その後、2年間の個人事業主を経て、合同会社sunsuntoを設立されました。
現在、法人事業としては、泊まれる芝生グランピング「トマシバ」、シェアオフィス「シゴト場カケル」、「クラウドファンディング」のサポート業務、サイトや動画・チラシ制作などのクリエイティブワークを。個人事業としては、大山の暮らしに触れるをコンセプトに観光事業「OrangeTrip」、野菜通販「OrangeBox」、シェア別荘「わたげ荘」を運営しておられます。
まーしーさん:直感大事ですね。その時動かないと、結局、後から動かないじゃないですか。
協力隊を辞めて起業
協力隊としての一年は、まず地域を知ることに焦点を当てて活動をしていたとのこと。大山町のことを知りながら、面白いと思ったことをカタチにすることを繰り返し行なっていました。
まーしーさん:地域のことを知るためには、まず、遊ばないといけないから、いっぱい遊びましたね。
そして、2年目を迎えるに当たって、地域おこし協力隊として大山でできることだけではなく、自分にしかできないものを、この地域でカタチにしていきたいと、協力隊からの卒業を決意。
地域おこし協力隊を辞めて、その土地に残るという選択をすることは、全国的にも珍しいことだったため、周囲の人にはとても驚かれたそうです。今思えば、それが地域の方やお世話になっている方々に、決意と本気度が伝わるきっかけになり、信頼関係の構築に繋がったのではないかと話されていました。その決断があったからこそ、起業するまでに応援してくださる方々が沢山いたり、起業してからも様々な方に支えてもらっていると、笑顔で話していました。
まーしーさん:本気で一年やったからこそ、自分のやりたいことに対しての選択肢が狭まった。自分でやるしかないと思いました。
法人事業としても、個人事業としてもたくさんのコンテンツをお持ちのまーしーさん。
アイデアや、チャンスはどのように生まれたものなのか、気になったので一つひとつ聞いてみました。
小さく始めて、少しずつ、一つずつ形にしていくことから始まりました。
トマシバスタート
「トマシバとは、一日一組限定のグランピング施設です」と伝えると一般的な伝え方になるのですが、トマシバが生まれた本質の面白さは別にあるんですと話される、まーしーさん。
トマシバができたきっかけは、個人事業主時代に芝農家さんのお手伝いをしていたところから始まり。手伝いをしながら感じた、芝のよさ、芝畑から見える景色の素晴らしさに感動し、大山に遊びに来てくれる友達を案内するようになったそうです。そこから、夜の星空の観光プログラムを開始し、その延長で「ここに泊まれたらいいのにね」の声から生まれたのがトマシバとなります。
このようなきっかけから、大山ならではの魅力である1次産業と暮らしに紐づいた、6次産業としてのグランピングを開始することになりました。「なぜ6次産業化なのか?」と思った方もいるでしょう。その答えは、野菜を加工品にすることを6次産業化と呼ぶように、トマシバは芝を泊まれる形に加工しているからです。いうなれば、トマシバは、1次産業である芝の泊まれる6次産業化なのです。
4年目を迎えたトマシバは、年々宿泊数が増加中。初めから広く広告をするのではなく、SNSでの毎日投稿から始まり、今に至ります。地道な方法ではありますが、トマシバのことを本当にいい、心から来たいと思ってくれた人が集まる場所にしたいと活動していた成果が出始めています。
まーしーさん:トマシバは、目の前のことを、全力でやったからこそ見えてきたもの。僕は、先のビジョンを考えて行動すると飽きちゃうので、目標からのアプローチはしないようにしています。先が見えないのを楽しんでいます!
シェア別荘「わたげ荘」
2020年からスタートした、個人事業の一つ。
シェア別荘+シェアハウスを兼ね備えており、初期費用を払えば、以降は年会費で過ごせる場所を提供しています。
もともと別のシェアハウスとして利用されていた家であり、一般住宅として売り出されるタイミングでまーしーさんが購入し、事業として開始しました。
シェア別荘として運営することで、予定を早く立てて予約をしなくても、行きたいと思った時にフラっと気軽に集まれる場所としています。また、わたげ荘は紹介制限定となっており、滞在するメンバーが安心できる場作りをしているのも大きなポイントです。そこで集まるメンバーで、企画やお祭りを開催するなど、それぞれが大山生活の拠点として利用しながら、新たな関わりが生まれています。
まーしーさん:人が一番価値がある。人がいるから仕事も生まれ、お金も生まれる。
クラウドファンディングの伴走支援(アドバイザー)として活動
なかなか聞かない活動だが、自身がトマシバのクラウドファンディングを行ったことがきっかけに始まった事業です。
クラウドファンディングを知れば知るほど、良さと課題に気づいた。やりたいことがある人が、やりたいことを実現するためのサポートしたいと2019年から開始。一般的な銀行からの出資とは違い、過去の信用だけでなく、未来の希望に対してもお金が集まる面白い仕組みだと気づき、現在も継続して行っています。
現在、鳥取島根において、14件のサポートを行い、約2800万円を超える資金調達を行っています。
企画を練ることを提案したり、銀行融資を進めたり、時間を置くことを提案したり、相談者によりあった提案をしているので、相談のうち、実際にクラウドファンディングのサポートをするのは約4割となっています。
まーしーさん:都会と違い、鳥取のような地域では、小さいことでもやりたいことを一人ひとりが実現できるカタチを作りたいと思いました。
鳥取で起業するメリット・デメリット
メリット
あるものを活かせる。
金銭的資本以外の魅力的な自然資本や社会資本が豊富。そのため、起業をするとしても、それらを活かして、小さくも大きくも始めることができます。
一人ひとりの存在感が高まる
人口が少ないので、一人ひとりの存在感が高まる。そのため、横のつながりが自然にできたり、人間関係が構築しやすいです。
嘘が通じない
人口が少なく、「仕事」と「暮らし」が隣接しているため、仕事向きの自分だけ取り繕っても、あまり意味がないです。ありのまんまの自分が良くも悪くも、じんわりとしっかり伝わっていくのが鳥取の特徴の1つです。
まーしーさん「デメリットはあまり感じないのですが、個人的に鳥取で事業するときに気を付けて置いた方がいいことはありますね。人によればそれがデメリットかもなので、はなしますね。」
デメリット(気を付けること)
ちょうどいいスピード感を求められる
ちょうどいいスピード感があります。地域や地域の人々を巻き込む事業の場合、人の気持ちは置き去りにすることはできないので、関係性を構築するところも含めてのスピード感が大切です。
つまりスタートダッシュはしにくく、場所とお金があれば、なんでもできるわけではありません。早い遅いではなく、ちょうどいいスピード感が大切です。※人や事業によります。
人口が少ないので、新たな自分に生まれ変わりにくい
人口が少ない鳥取の場合、一度やったことのイメージがつきやすく、広まりやすい。なので一度ミスしたら、そのイメージが付きやすく、新たに関係性を構築するのが難しいです。つまり、何度も何度も新たな自分として接することは難しいので、一人ひとりに対してしっかり向き合うことが大切となります。
暮らしとしごとが隣接している
「暮らし」が「しごと」に影響している方が多いです。見方を変えると、「しごと」だけしっかりしてても、周りに対して「暮らし」が不誠実だと、それにより「しごと」がしにくくなるということがあります。※暮らす地域によります。
まとめ
今回は、地方×起業と題し、お話を伺いました。
都会からの地方移住、会社からの独立や起業を目指す若者が増えている現代において、まーしーさんの鳥取で過ごしてきた数年間を想像しながら、熱い言葉をたくさん頂きました。
やりたいことをカタチにしてもいい、思いを持つ人自身に一番の価値があることを伝えてくださいました。また、自分の感じたことや、直感を大切にしておられる姿が印象的でした。
これから起業を考えていらっしゃる方へ、きっかけと勇気を与えることができると幸いです。
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