2025年鳥取イベントスケジュール

【山陰初の同時展示】小惑星「イトカワ」&「リュウグウ」の展示が3月19日〜26日で開催されます!|米子市

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小惑星探査機「はやぶさ」・「はやぶさ2」によって宇宙から持ち帰られた、小惑星「イトカワ」と「リュウグウ」のサンプル(実物試料)が米子市児童文化センターで期間限定で展示されます!

イトカワとリュウグウのサンプルが同時に公開されるのは、山陰初となります。

この貴重な機会に、これらのサンプルを実際に見て、宇宙の神秘に触れてみてはいかがでしょうか?

展示が始まるのを前に、宇宙物理学がご専門の米子工業高等専門学校の竹内彰継教授へのスペシャルインタビューも実施しましたので、合わせてご一読ください。

目次

開催概要

開催概要

開催日時
令和7年3月19日(水)~3月26日(水)
開館時間:9:00〜17:00
休館日:3/25(火)

開催場所
米子市児童文化センター 1階 研修室
鳥取県米子市西町133(MAP

料金
無料

【展示内容】小惑星「イトカワ」「リュウグウ」の粒子が観察できる

本展示会では、小惑星探査機「はやぶさ」および「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星「イトカワ」および「リュウグウ」の実物サンプルを展示します。

イトカワとリュウグウの2つの小惑星から採取されたサンプルが同時に公開されるのは山陰で初めてで、日本の宇宙探査にとって非常に重要なイベントです!

来場者は、サンプルを間近で観察し、両小惑星の違いを学ぶことができます。

本展示は、「プラネタリウム100周年記念事業」の一環として、全国の博物館、科学館、プラネタリウム施設を巡回するイベントの一部であり、宇宙探査の成果を広く伝えることを目的としています。イベントを通じて、宇宙に対する理解が深まること間違いなしです!

竹内教授スペシャルインタビュー

地球以外の天体から試料を持ち帰る「サンプルリターン」の意義や、試料の分析を通じて分かることなどについて、宇宙物理学がご専門の米子工業高等専門学校の竹内彰継教授にお話をうかがいました。

天文学の「弱点」補うサンプルリターン

―地球以外の天体から試料(サンプル)を持ち帰る「サンプルリターン」の意義について教えてください。

竹内教授

科学(サイエンス)は、関心のある対象を手に取り、分析するのが普通です。ところが、宇宙や天体を対象とする天文学の場合、ごく一部の例外(隕石など)を除き、サンプルを手にすることができません。
 天体からやってくる光(スペクトル)を分析し、天体の温度や構成物質を調べたりすることはできますが、実際に物体を手に取って分析することにはとてもかなわない。天文学のそうした弱点を補うのが、サンプルリターンです。

アポロ 17 号の宇宙飛行士による月面でのサンプル採取の様子(提供:NASA)
竹内教授

米国のアポロ計画(1962〜72年)では、人の手で月から石を持ち帰りましたが、これもサンプルリターンです。月の石を調べると、地球の岩石と似ていること、そして、ものすごい高温を経験していることが分かりました。そこから、月は地球の表面をはぎ取ったもの、つまり「ジャイアント・インパクト」と呼ばれる、地球と微惑星の衝突とその後の再集積でできたとするシミュレーション結果が1985年に発表されました。「月の石から、こんなことが分かるのか」と感動したことを覚えています。

-地球も太陽系の惑星の一つですが、地球では太陽系ができた当時の様子は分からないのでしょうか?

竹内教授

地球が形成される際、引力によって隕石が多数降り注ぎ、高温で表面は溶けてしまったと考えられます。そのため気体になりやすい成分はその時蒸発してしまっています。その後、生命が誕生し、植物が生まれ、酸素ができた。このことで地表の物質は酸化し、さらに風雨にさらされて原始の状況から相当変化してしまっています。そのため、地表の物質を分析しても、太陽系が誕生した時までさかのぼることが非常に困難なのです。

小惑星探査機「はやぶさ」(提供:JAXA)

-はやぶさ、はやぶさ2が持ち帰ったサンプルの総重量は、それぞれ数10マイクログラム(10万分の1グラム)と5.4グラムですが、この量で分析は可能なのでしょうか。

竹内教授

アポロ計画で月から持ち帰った石は、合わせて約382キログラムでした。それに比べると、イトカワとリュウグウのサンプルは、「たったこれだけ?」と思うくらい少量です。でも、分析技術の進歩により、2つの小惑星が、それぞれどんな物質で構成されているか、また、その形成の過程などが分かります。

小惑星の構成物質や成り立ちを解明

-具体的にどんなことが分かったのでしょうか。

竹内教授

例えば、小惑星の構造や成り立ちです。サンプルから構成物質が分かれば、小惑星の体積からその質量が計算できます。これを、探査機が小惑星から受ける引力の強さから求めた質量と比べると、実際の質量は計算上の質量より軽いことが分かりました。これは、小惑星の中に「すき間」があるためと考えられています。つまり、もともとの天体があって、これが別の天体との衝突で粉々になり、再集積したという説です。このような手段で小惑星の成り立ちが推測できるのです。

小惑星「イトカワ」(提供:JAXA)
竹内教授

また、リュウグウのサンプルからは、水の存在をうかがわせる物質が見つかっています。リュウグウは、現在の状態では水は液体では存在できません。そのため、元の天体(母天体)は水を液体で保持できるほど大きな天体で、それが破壊されて小惑星になったと考えられます。さらに、リュウグウのサンプルからは、炭素質に加え、生命の起源と考えられるアミノ酸も発見されています。

高度約6kmから撮影した小惑星「リュウグウ」(提供:JAXA,東大など)
竹内教授

地球からの天体分光観測によって、イトカワが岩石質で、リュウグウが炭素質を多く含んでいることは事前に分かっていました。しかし、天体の光をいくら分析しても分からないことが、「吹けば飛ぶような」サンプルから分かる、しかも、生命の起源に関わるようなことを教えてくれるのです。まさに、驚きの連続です。

-技術の進歩にも、驚くべきものがありますね。

竹内教授

はやぶさ2によるサンプルリターンの成功は、日本の技術がすごいレベルに到達していることを示しています。日本の宇宙探査は世界的に見ると後発でしたが、うまく戦略を練ることで世界レベルに追いつき、サンプルリターンでは世界最先端を走っています。
 小惑星の表面は、宇宙放射線や高温の太陽風(高エネルギーの粒子)により、誕生当時、つまり、太陽系の初期段階から劣化しています。これを「宇宙風化」と呼びます。はやぶさ2はリュウグウの表面に「人工クレーター」を作って穴を開け、宇宙風化していないところからサンプルを採取しました。

小惑星探査機「はやぶさ2」によるリュウグウのクレータータッチダウンのイメージ図(提供:JAXA)
竹内教授

「表面に穴を開け、地中からサンプルを採取する」というのは、アイデアとしてはすぐに浮かぶかもしれませんが、実行するのはとても難しい。穴を開けるにしても、人工クレーターを作った際の破片がぶつかって探査機を傷つける可能性もあり、慎重な対策を講じる必要がありました。
サンプルリターンに関しては、はやぶさで技術が生まれ、はやぶさ2では蓄積された技術が有効に生かされた。そして、はやぶさ2は現在も次のミッションに向かって宇宙を飛んでいます。技術発展の良いサイクルができているのではないでしょうか。

-今後、小惑星探査はどこに向かっていくのでしょうか?

竹内教授

現在は知識を増やし、技術を高めていく段階で、これをフェーズ1とすると、フェーズ2は実用段階、つまり、資源探査ではないでしょうか。小惑星のサンプルリターンが、小惑星の資源を地球に持ち帰る「小惑星リターン」に発展する日も遠くないかもしれません。日本の宇宙開発の技術者は、何もなかったところから世界のトップに躍り出るという歴史をつくってきました。ぜひ、若い人たちに引き継いでいってほしいと思います。

欧米や成長著しいBRICSでは、STEM教育が重視されています。STEMとは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字を取ったもので、これらの分野を統合的に学習する教育手法です。

私は昨年5月、米子高専の生徒たちとともに、米国ロサンゼルスで開催されたリジェネロン国際学生科学技術フェア(ISEF2024)に参加しました。約1,700名の参加者のうち、およそ半数は米国内から、残りの半数は米国外からの参加ですが、日本からの参加者はわずか22名でした。

STEM教育に真剣に取り組んでいる中国やブラジル、インドなどからは、たくさんの高校生が参加していました。ISEFには22の分野がありますが、発表会場では分野を超えて活発な交流が行われており、米国がいかに分野間交流を重要視しているかがわかりました。

日本では、専門分野が異なると交流が少なくなる傾向にあります。しかし、小惑星サンプルリターンのようなブレークスルーは、分野の違う人々との交流で生まれます。日本の若い人たちにも、さまざまな分野に関心を持ち、互いに交流して切磋琢磨してほしいと思います。

太陽系の「タイムカプセル」をぜひ会場で

-たくさんの人に今回の展示を見ていただきたいですね。

竹内教授

小惑星「イトカワ」「リュウグウ」の両方のサンプルを見ることができる、しかも地元、山陰で見ることができるのは大変貴重な機会です。吹けば飛ぶようなサンプルから、小惑星の一生のストーリーが分かります。サンプルリターンがもたらした試料は、太陽系のタイムカプセルと言えるでしょう。
これまで宇宙や天体に関心がなかった人も、この微少なサンプルからすごいことが分かるということを、会場で体感してほしいと思います。子どもたちにとっては、人生の選択肢に「科学者」や「技術者」を加えるきかっけになるかもしれません。

竹内教授のプロフィール

竹内 彰継(たけうち あきつぐ)

1989年、京都大学理学研究科博士課程(宇宙物理学専攻)中退、米子工業高等専門学校に着任。1993年博士号(理学)を取得し、2007年から教授。科学部の顧問として、20年以上にわたり、生徒による天文研究や観測機材の設計・製作を指導するなど、天文に興味を持つ人材の育成に力を入れている。科学部の生徒による新型分光器「TORIHIME」の開発(2023年)は、昨年5月の米国リジェネロン国際学生科学技術フェア(ISEF2024)での優秀賞4等(物理学・天文学分野)受賞、昨年7月の文部科学大臣表彰など、国内外で高く評価されています。

<用語の説明>
・サンプルリターン
地球以外の天体から試料(サンプル)を採取し、地球に持ち帰ること
・BRICS
成長が見込まれる新興国。主にブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)、南アフリカ(S)の5カ国を指す
・STEM教育
STEMとは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字を取ったもので、これらの分野を統合的に学習する教育手法のこと。

主催・お問い合わせ

  • 主催: プラネタリウム100周年記念事業実行委員会、JAXA宇宙科学研究所 地球外物質研究グループ(ASRG)、米子市児童文化センター
  • 共催: 東京大学大学院理学系研究科宇宙惑星科学機構、名古屋市科学館
  • 協力: 鳥取市さじアストロパーク、日本プラネタリウム協議会(JPA)
  • お問い合わせ: 米子市児童文化センター 0859-34-5455(電話受付:9:00~17:00)
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この記事を書いた人

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